時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
「……ええ。もしもこの先、この国に金色の髪を持つ王太子が生まれたなら、その子はどなるのだろうかと」
カイルが、はっとしたようにアメリのエメラルドグリーンの瞳を見つめる。
しばらくの間、二人は無言で見つめ合った。
「……それは、俺には分からない。この先金色の髪を持つ王太子が生まれるかもしれないし、そうではないかもしれない」
どこか苦しげに、カイルは言った。伏せた目線の先には、おそらく辛い過去の思い出が蘇っているのだろう。
「だが、もしも生まれたのなら……。その王太子にも、お前のような信じ合える者が現れることを願うしかない」
カイルが、再びアメリをその胸に閉じ込める。
カイルの胸の温もりを感じながら、アメリもカイルを抱きしめ返した。
国王といえども、国家機密であるその予言の書を廃棄することは不可能だ。それにたとえ予言の書がなくなっても、その内容はこの国の重鎮たちの脳裏から離れることはないだろう。それほどに王国の滅亡を謳ったその予言は、印象が強いからだ。
過去にいる自分たちは、祈りを捧げることぐらいしか出来ない。
だが、アメリには一つ確信があった。
だから、気がかりで仕方がないのだ。
(おそらく近い未来、金色の髪を持つ王太子は生まれるわ……)