時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
「国王陛下の物語を書いているんです」


「まあ、素敵ね!」


「陛下には、内緒にしていてくださいね」


「わかったわ」


アメリは、アレクの頭をよしよしと撫でた。すると少年は、思い詰めたように瞳を伏せる。


「でもなかなかうまく書けなくて……」


アメリは微笑んだ。そして、その場にしゃがみ込むと、アレクの薄茶色の瞳を優しく見つめる。


「大丈夫よ、アレク。あなたなら出来るわ」


「本当でしょうか……」


「そうよ。すぐには無理かもしれないけど、あなたには時間がたっぷりある。躓いたら立ち止まって、少し休んでまた書いたらいい。焦らずゆっくりと、何年かけてでも自分が書きたい物語を書くのよ」


アメリの瞳を見つめるアレクの表情が、徐々に明るくなる。


「わかりました、アメリ様」


一見ひ弱に見えるこの少年が内なる強さを秘めていることを、アメリは知っていた。


「もしも書き上げることが出来たなら、あなたに一番にお見せしますね」


「ふふ、ありがとう。国王陛下がやきもちを焼くかもしれないけど、嬉しいわ」




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