憧れの舞台俳優は✗✗でした
厳選なる抽選の結果…
~プロローグ~
(クソっ…‼なんで今日に限ってスマホを家に置いてくるんだっ‼
おまけに図書委員会の会議があるなんて‼)
5月の夜の涼やかな風が自転車の車輪の間をすり抜ける。
街灯と月の光だけがあかりを照らし、頬は少し汗ばんで
光っているように見える。
荒々しくペダルをこいで最後の急な坂道をのりこえる。
庭の側に自転車を止め、焦りながらロックをかけると思いっきりドア
を開け、ドタドタと家に上がった。
その騒々しさにひかりの母が驚いたのか、
夕飯を作っている途中だったので調理器具を持ったまま
玄関の様子を見に来た。
「ひかり~帰ったの~?ただいまくらい言いなさいよね~」
「はーい!!!」
無駄に元気な生返事をして、自分の部屋がある2階に通じる階段を
軋ませながら登った。
鞄を放り投げ、ベッドの側のスマホを充電器から切り離し、
勢いよくベッドの上に正座をした。
体を硬直させながらメールのアイコンをクリックし、
新着メールを確認した。
5、6件ある新着メールのトップに
『抽選結果のお知らせ』
という文字が見え、息が詰まる。
そのメールをタップすると、詳細が書いてあった。
一旦目を閉じ、画面を伏せて深呼吸をする。
覚悟を決めてもう一度画面を見る。
『この度は明石昴First Photo Book発売記念イベント抽選に
お申し込みいただきありがとうございます。
厳選なる抽選を行った結果、お客様はご当選されました。』
「ご、とう、せん…」
メールを読み終わると、ベッドの上に静かにスマホを置き、
両手の拳をゆっくりと上に掲げると
「やったぜ………………」
と喜びを噛み締めた。
すると息をするようにシャベッターを開き、
『明石さんのフォトブックイベチケご用意されたぁぁぁぁぁ
ぁ!!!!!!!!!よっしゃあぁぁぁ!!!!』
と真顔で思いの丈を呟いた。
すると、
「ひかり~!何してるの~??ご飯できたわよ~!!」
と一階から母の声が聞こえた。
「はーい!!!❤」
さっきの生返事とあまり変わらないが、
その声には間違いなく嬉しさが溢れていた。