親友だから 【 短編小説 】
「ごめんね、由実。」
「何謝ってんの!一人で帰れる?」
「……うん、大丈夫。」
校門を出て、バス停までの道のりを歩く。
信号を渡って、右が私が向かうバス停の方向。
左が、由実の家へ向かう方向。
いつものように、由実は私のバス停の方を選ぶ。
さっき由実が死んだのは…………
私を見送ったから。
もし、あの時私のことを見送らなければ………………
由実は………………。
「…………あっ…………今日は、送ってくれなくて大丈夫だよ」
もしさっきの出来事が夢だったとしても、私は同じ道を選びたくない。
「え、どうして?」
「えっ…………と…………今日は、大丈夫だから…………」
「……?バスが来るまで待ってるよ!夏樹、特に今日体調悪そうだし」
「…………ううん!いいの!本当に今日は!そ、それより、由実、今日は走って帰った方がいい…………よ」
「え?どうして?」
「…………勝負しよう。私と由実、どっちが先に家に帰れるか」
「なにそれぇ?」
「いいから!…………一度、やってみたかったの」
「変なの。別にいいけど……」
「じゃあ決まり!本気でやってね!手加減はなしだから!」
「…………体調は優先しなよ?」
「大丈夫大丈夫っ」
明らかに不自然なこじつけた理由で、由実をバス停に近づかせないようにする私。
なんでもいい。
とにかく、由実はバス停には来ちゃいけない。
来てしまったら…………きっと。