冷酷な王さまは愛し方を知らない
初恋のはじまりとおしまい
花の色も花の匂いにも、何一つ興味などなかった。
きっと。
お前に会うまでは。
――・・・―――・・・―――・・・
「アルさま、リズさまを自室の方へ移動された方が…」
「ここでいい」
治療を終えたリズを自分の部屋のベッドに連れてきた俺に、キースが進言する。
しかし、俺はそれに首を縦に振ることはしない。
俺を庇って傷を受け倒れたリズ。
苦しそうな呼吸。
ベッドに横になり固く瞳を閉じている様をじっと見つめる。
「こちらに食事を運びますので、どうか少しは食事をとってください」
「……」
俺を心配しての言葉だが、俺は素直に聞くことなんてできない。
俺の胸を支配するのは、後悔と絶望。
一命を取り留めたリズ。
だがまだ目を覚ますことがない。
痛々しい傷跡を目の当たりにし、女の体に傷をつけてしまった事への後悔が押し寄せる。