冷酷な王さまは愛し方を知らない
その女が何者かわかったのは、その日から1週間後のことだった。
気さくな性格の騎士団長クリスが、あの花屋に通っていることがわかったのだ。
「ああ、小柄の子なら、リズといってとても心の優しい子ですよ」
「…そうか」
聞いてもいないことまでペラペラ教えられた。
そして、その流れでなぜか身分を隠しその花屋に連れていってもらうことになったのだ。
顔を合わせ、直接話した感覚は、とても暖かく。
これまで誰と話してもこんな風になったことはなかった。
暖かく、朗らかで穏やかな時間。
「貴族方から王妃はまだかと」
「煩い。黙らせておけ」
「わかっています。ですが、余計な不満などはうまないほうがよいかと」
執務室で書類の確認をしていた俺に、苦々しい表情でキースが言った。
キースの言うことは一理ある。
まだ若い俺に不満を抱く貴族の噂をちらほらと聞く。
その者たちに好き勝手言わせないためにも、少しでもそういった文句が上がる問題は少ない方がいい。