冷酷な王さまは愛し方を知らない
そんな風には見えなかった。
同じ候補者で、悪意があるようには見えなかったもの。
そんなことを思いながら視線を移ろわせると、窓際に見覚えのある鉢植えが置いてあるのに気付いた。
Red dropsという、以前身分を隠して花屋に訪れたアルさまに私が差し上げたものだ。
私が差し上げたときと同じくらい、いえ、それ以上の花を咲かせ、お世話が行き届いていることがわかる。
花になど興味がないと仰っていたのに。
大事に飾ってくださっていたのだ。
そのことを知り、無性に嬉しくて頰がほころぶ。
国民のイメージとは違う面を持つアルさま。
それを知っただけでも、私はここに来た価値がある。
きっと、不器用で口下手なお方なのだ。
誤解されやすく、孤独な方。
裏切りが近くに当たり前のように存在する世界に生きている。
少しでもその孤独をなくして差し上げたい。
そんな感情を抱くなんて。
アルさまをもっと、知りたい。
そう、思い始めていたのに。