冷酷な王さまは愛し方を知らない
「あら、クリス。いらっしゃい」
サーシャさんの声に我に返る。
え、クリスさん…?
ハッとして振り返ると、いつも花屋にやってくる普段着のクリスさん。
あの王城で出会った騎士団衣装のクリスさんではない。
「やあ。…リズも」
「あ、はい。こんにちは」
どう反応していいのか戸惑う。
クリスさんも少し困った様子で私を見る。
「なんだか久しぶりね」
「ああ」
私が候補者として王城にいた間、クリスさんはここにきていなかったらしい。
それからまた一月が経っているから、本当にずいぶん来ていないようだ。
「今日は、リズに話があってきたんだ。少し、借りていいか?」
「リズに?ええ、いいわよ。今は落ち着いているし」
「ありがとう。…じゃあ、リズ、いいかな?」
「え…、あ、はい」
サーシャさんじゃなくて、私に?
もしかして、サーシャさんに話していないかの確認かしら。