冷酷な王さまは愛し方を知らない
突然。
そう、突然に後ろから誰かに腕を引かれた。
え?と思う暇もなく、引かれるままに私はその場から連れ去られる。
「あ、あの、誰…、ちょっ…」
戸惑いから声を漏らすが、返事はない。
誰かわからない不安。
でも、なぜか恐怖は感じなかった。
私の腕を握るその手が無性に優しい。
その腕は、私を人気のない場所まで連れてくるとようやく止まった。
暗闇に浮かぶ背中。
「突然、すまない」
聞こえは声は、なんとなくわかっていたような。
ああ、やっぱり。
そう思った。
「…アルさま?」
「ああ…」
アルさまだ。
どうして、ここに。
目を凝らして見ると、舞台にいたときのマントは外している。
シンプルで目立たない衣装に着替えていた。
「どうして…」
「元気だったか…?」
「え…?」
慈しむような声。
なんて優しい声。