冷酷な王さまは愛し方を知らない
「あ、あの。はい。アルさまも…」
「俺は、別に。…怪我の方は」
「あ、もう痛みもなくほとんど傷跡も消えました」
私のケガを心配してくれていたんだ。
私が勝手に早とちりして飛び出しただけなのに。
アルさまは、ちゃんとわかっていた。
行動を起こさせるためにあの候補者選びを使ったのだと説明してくれたのだ。
「一人か?」
「…はい」
「星空祭は、大切な誰かと共に過ごすものだろう?」
「母の調子が悪く父が付き添って自宅に…」
「好いている奴はいないのか」
「そういう人は……」
人の気配もなく静かで。
余計なものも見えない暗闇。
その暗闇が余計にアルさまの存在を際立たせているような気がする。
小さな一挙手一動もすべて伝わってしまうような。
変な緊張。
「…紙灯篭を飛ばす者は…?」
「いません…」
「ならば、共に飛ばそう」
「え……」
思いもよらない言葉に顔をあげる。
暗闇の中に真剣なアルさまの顔が浮かび上がった。