冷酷な王さまは愛し方を知らない
「ドレスなら、私がどうにかしてあげるわ」
「サーシャさん!そんな、私は…」
「こんな機会がなければ王城になんて入れないわよ。精一杯めかしこんで楽しんでいらっしゃい」
仕事をしながら話を聞いていたらしいサーシャさんがそう笑った。
こんな機会がなければ…か。
確かにそうだ。
ここは王都で王城から目と鼻の先。
だけれど、王族に出会う事なんてそうそうないし、私とはまるで住む世界が違うもの。
「王さまじゃなくても、素敵な殿方に出会えるかもよ」
「え…っ!わ、私、別に…」
「きゃー!素敵!私頑張ってお洒落しなくちゃ!」
乗り気のユナはサーシャさんの言葉に一層張り切りを見せる。
私は、そういうのよくわからないし…。
「あーいいわねぇ。私もあと10くらい若ければ行けたのに」
「サーシャさんなら、王さまの心も射止めるかもしれませんね」
「ふふっ、リズったら、褒め上手ね」
「本気ですってば」
とにもかくにも、私たちは舞踏会に行くことになってしまった。