冷酷な王さまは愛し方を知らない
馬車に揺られ1時間。
町並みはすっかり緑広がる草原。
でも、サーシャさんが言っていたことを裏付けるかのように、ところどころ戦の爪跡が残されている。
抉られた土、なぎ倒された草木。
持ち主を失った矢に剣。
戦の壮絶さを物語っていた。
「ここでアルさまも戦ったのかな……」
ポツリと落ちるようにあふれ出た言葉。
無意識の言葉に胸がチクリと痛んだ。
温もりだけを残されたあの日の出来事。
今は切なさだけが残る。
こんな事なら、あの触れ合いもなかった方がよかった。
抱きしめられてしまえば。
求めてしまう。
その温もりを、もっと。と。
馬車をおりると、まっすぐと目的地へと向かう。