冷酷な王さまは愛し方を知らない
「いらっしゃい。サーシャさんから聞いているよ。君がリズだね」
「はい。今日はお願いします」
「ああ。いい花が育ったんだ。ぜひ見ていってくれ」
迎えてくれたのは花を育てている、生産者の女の人。
名前は、クレハさん。
私の母くらいの歳の方だ。
「今日欲しい花のリストはコレなんですけど…」
「ん、と。じゃあこっちだよ」
温厚そうな話しかたと表情に、少しホッとする。
クレハさんに連れられて私は花の並ぶハウスへと入った。
「わあ」
色とりどり種類も豊富に咲きそろう花たち。
それはとても愛情を注がれていることがわかるほどきれいに咲き誇っていた。
サーシャさんが遠くてもここまで買い付けに来る理由がわかる。
私は真剣に花たちと向き合う。
サーシャさんが任せてくれたこの仕事、立派にやり遂げたい。
でも、どれを選んでも文句のつけようがない花たち。
この中からより良いものを選ぶのはとても難しくもあった。