冷酷な王さまは愛し方を知らない
「敵国の国民に、このような事をしておいて生きて帰れると思っているのか?」
ザリッ、と土を踏みしめ男たちに近づく。
男たちは恐怖からか、足がもつれ尻餅をついた。
アルさまは、容赦なくその者達に剣を振り下ろした。
怖ろしい断末魔と、舞う血飛沫。
私はおぞましいその光景に思わず目を閉じた。
残酷な光景。
これが戦争。
これが、現実なんだ。
こんなアルさまを見たくなかった。
そう思うのは、私がアルさまに理想像を抱いているだけなのだろうか。
この残酷な姿さえ、アルさまだと受け入れるべきなのだろうか。
それができない私には、アルさまを好きでいる資格など、ないだろうか。
「リズさん…!」
目を閉じ、現実を閉ざしていた私に聞き覚えのある声が近づく。
恐る恐る目をあけると、心配そうなキースさんの顔。
「キースさん…、どうして…」
キースさんは戦場にはいかないと言っていたはず。
この間の戦の時にも、私たちと共に城でアルさまの帰りを待っていた。
なのに、なぜ。