冷酷な王さまは愛し方を知らない
「ですが…、生きています。生きてさえいれば、傷は治ります…」
あんなにも無情に人を殺してしまえる人が、どうして私のこんなかすり傷程度に困惑しているのだろう。
そう考えると、やはりアルさまだって人なのだと思う。
いい面ばかり見ていては、本当のアルさまを知ることはできない。
本当のアルさまを知らなければ、アルさまを好きだと認めることはできないわよね。
「風呂に行ってくる」
「は、はい。あの…」
「お前も、もう一度入っておけ。血で汚れてしまった」
「…はい」
離れることが名残惜しくて。
でも、そんな事言えるはずもなくて。
「…今日は、ここに泊まっていけばいい。着替えを済ませた後、またここに来てもいいか」
「え…、あ、はい。もちろんです!」
戻ってきてくださるのだ。
私の気持ちが通じたみたい。
きっと、明日元の生活に戻れば、こうしてアルさまとお会いする機会なんて待たなくなってしまう。
アルさまと私を繋ぐものは何も……。
そう考えると、最後のチャンスにアルさまとの時間を過ごしたかった。