冷酷な王さまは愛し方を知らない


さっき、私に縛り方がきつくないかと心配した様子だった人には思えない。
任務を淡々と処理しているように見える。

それは、まるで物を壊すだけのような。


私の首元を抑えつけ、ナイフを持ち変える。



「いや…!やめて!」




片手で抑えられているだけなのにビクともしない身体。
怖くて、でも、こんなところで死にたくなんてなくて。

逃げなきゃ。
なんとしてでも。
そう思うのに身体はうまく動かない。



「いいわね、その表情。もっとよく見せなさい」




どうしてこんな風になってしまったのか。
どうしてルナさんは、こんな事をしなくてはいけなかったのか。


キラリと光るナイフの先がとてもリアルで。
どうしたって逃げることはできないのだと、やけに冷静に思った。




「動くな!!イリア王国騎士団だ!!」



バキッと盛大な音が聞こえ、人の気配がなだれ込んでくる。
“イリア王国”その言葉に、私はハッとした。



< 176 / 413 >

この作品をシェア

pagetop