冷酷な王さまは愛し方を知らない
さっき、私に縛り方がきつくないかと心配した様子だった人には思えない。
任務を淡々と処理しているように見える。
それは、まるで物を壊すだけのような。
私の首元を抑えつけ、ナイフを持ち変える。
「いや…!やめて!」
片手で抑えられているだけなのにビクともしない身体。
怖くて、でも、こんなところで死にたくなんてなくて。
逃げなきゃ。
なんとしてでも。
そう思うのに身体はうまく動かない。
「いいわね、その表情。もっとよく見せなさい」
どうしてこんな風になってしまったのか。
どうしてルナさんは、こんな事をしなくてはいけなかったのか。
キラリと光るナイフの先がとてもリアルで。
どうしたって逃げることはできないのだと、やけに冷静に思った。
「動くな!!イリア王国騎士団だ!!」
バキッと盛大な音が聞こえ、人の気配がなだれ込んでくる。
“イリア王国”その言葉に、私はハッとした。