冷酷な王さまは愛し方を知らない
「馬鹿野郎!ナイフの刃を素手で握るなんて…!」
「アルさま…」
アルさまは私の両手を取ると、布を取り出しぐるぐると巻きつけていく。
布はすぐに赤く染まり、傷は思ったより深いことを知った。
でも、その痛みよりずっと、アルさまが来てくれた事の安堵感の方が大きい。
「なぜ…」
「お前には、お前がいなくなると心配して駆けずり回ってくれる者が周りにたくさんいるのだな」
「え…」
「お前が、人を大切にしているから故だろうな。だからお前も大切にされる…。なんとなく、そう気づいたのだ」
止血するため私の両手を抑えながらアルさまは少し切なげにそう言った。
「お前の父が、王城に血相を変えてきたのだ。お前の事は門番も覚えていたからキースまで話が回った」
「それで……」
お父さん…。
王城に行った娘が戻って来なくてきっと随分心配かけてしまっただろう。
お母さんの事でも心をすり減らしているのに…。