冷酷な王さまは愛し方を知らない
「こんな傷だらけになって…。怖かっただろう」
「…お父さん」
私のために泣いてくれるお父さん。
心配かけてはいけないって強く思った。
「お父さん…。お母さんの手術、受けよう」
「リズ…?突然どうしたんだ」
「生きてるって、どれだけ幸せな事か思い知ったの。私はお母さんに生きてほしい。王さまの厚意を無駄にしないためにも」
「お父さんも、お母さんには生きてほしい」
「お金はちゃんと私が働いて返すから」
生きていればなんとでもなる。
逆を返せば、死んでしまったらどうにもならない。
それがどんな卑怯な手だったとしても。
藁にでも縋る想いだとしても。
縋らないよりずっといい。
「そうだな…。働いて手術を受けるつもりだったんだ。前借だと思って…」
「うん」
お母さんに生きていてほしい。
お父さんのためにも。
私のためにも。
自分が死にそうになって、余計に強くそう思った。