冷酷な王さまは愛し方を知らない
それは、突然だった。
お母さんの手術が無事終わり、私の手の傷もほとんど消えたある日。
花屋の仕事も休みで、家族水入らずの時間を過ごしていた。
玄関から来客を知らせるブザーが鳴り、お父さんが対応する。
そのお父さんが、血相を変えて引き返してきた。
「お父さん?お客さん?」
「そ、それが…」
「失礼する」
パクパクと金魚のように口を動かし仰天しているお父さんの向こうから、きらびやかな衣装をまとった人物が現れた。
古びた建物の狭い1フロアの室内に不釣り合いな豪華な衣装。
「あ、アルさま…」
「久しいな。リズ。手の怪我の具合はどうだ」
アルさまは、淡々とそれでいて心配そうにそう言った。
まさかのアルさまの登場に驚きながら、私はあんぐりとあけた口を慌てて閉じ手を見せる。
「この通り、大丈夫です!」
気にしてくれていたんだ…。
嬉しいけれど、ずっと気に病んでくださっていたというならとても申し訳ない。