冷酷な王さまは愛し方を知らない
「王さまって、結構男気の在るお方なのね」
「男気…?」
「覚悟を決めたってことでしょう?王妃に庶民を迎えるなんて、なかなか簡単に決断できることではないでしょうに」
「そうですよね…」
王族と庶民が不釣り合いなことくらい私にもわかる。
だからこそ、私は多くを望まないように、想うだけでいいと思っていたのだから。
「それくらい、あいつにも男気があってくれたらね……」
ポツリと、溜息のように吐き出した言葉。
それはサーシャさんの心からの声のような気がして。
私は、聞かなかったことには出来そうになかった。
だって、それはきっと、クリスさんの事を想っての言葉だったと思うから。
王国騎士団の騎士団長として働いているクリスさん。
いつだって命の危険にさらされている。
サーシャさんのためを思ってずっとそれを隠してきたクリスさん。
踏み込もうとしなかったのは、きっとサーシャさんを想って。