冷酷な王さまは愛し方を知らない


「そんな理由では、いけませんか?アルさまのお側にいる理由には、なりませんか?」



覚悟なんてない。
ただ好きなだけ。
ただお慕いしているだけ。

ただ…側にいたいだけ。



「十分だ」



アルさまはそう言って軽く笑う。
少しホッとしたような、また新しいアルさまの表情。




「アルさま…、お慕いしております。私を、あなたの側に置いてください」

「…リズ」



伸びてきた手に私の身体は浚われて温かな胸に抱かれた。
トクン、トクンと打つ胸の音が伝わってくる。

それは少し早くて、アルさまでも緊張することがあるのだと少しうれしく思えた。


きっと、アルさまのこの鼓動よりもずっと私の鼓動の方が早いけれど。
そう思いながら、私は身を委ねた。




< 191 / 413 >

この作品をシェア

pagetop