冷酷な王さまは愛し方を知らない
城に入って数日。
慌ただしい日々が続いていた。
王妃として身につけておくべきマナーや教養をレッスンで身につけ、国の勉強も始めた。
アルさまが治めるこの国の事、関わること全て。
私も知っておきたいから。
マナーは勉強と違い、ただ覚えればいいわけではないから苦労する。
無意識でも動けるように、そのくらい自然と振る舞えるようになるにはずいぶん時間を要しそうだった。
アルさまもご公務が忙しく、なかなかお会いできない。
時折廊下などですれ違う程度。
王さまの顔をされたアルさまはとても凛々しく、いつだって真剣だ。
その姿を見ると、私もアルさまのために頑張らないとと奮い立つ。
アルさまの側にいるために。
相応しくあるために。
「休憩になさいませんか?」
レッスンの教材にと用意された書物をかじるように見つめていると、目の前に差し出された紅茶の入ったカップ。
顔をあげると小さく微笑みを宿したキースさん。
あまり笑ったり、感情を表に出さない人なのに。
私に気を遣ってくれているんだろう。