冷酷な王さまは愛し方を知らない


「貴方と出会えてよかった。アルさまにとって、あなたは希望です」

「え…」

「貴方のような方が、アルさまには必要なのです」



それは買いかぶりすぎだと思う。
私には大した力はない。
後ろ盾などないし、まだほとんど何も知らない。

だから、必死なのだ。
無知な自分が情けないから。


「アルさまは孤独なお方なのです。信じられるものが誰もいない…。誰も、信じようとしない」

「でも…、キースさんはアルさまの事本当に」

「仕方のないことなのです。アルさまは幼い頃から、王族の陰謀や、憎悪や汚い感情の中に晒されてきましたから」



幾度か聞いたことのある。
私にはわからない世界。
王族には王族の苦悩がある。


「いずれ知ることになると思いますから今話しますが、アルさまの父君前国王は、暗殺されたのです」

「……!」

「暗殺も当たり前に行われる世界にアルさまはおられます。アルさま自身、暗殺の危険にさらされながら、懸命に公務に向かわれています」




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