冷酷な王さまは愛し方を知らない
メアリ先生の講習はとても厳しく、きっちりとしている。
私はついていくのに必死だ。
苦しい。しんどい。頭も体もパンクしそう。
きっと、私はそれくらいじゃないとだめだ。
20年間庶民として生きてきて、身に沁みついた習慣などは簡単に消せない。
私は私の20年間を消す努力をしなくてはいけない。
王族になるため。
アルさまのお側にいるため。
私自身のため。
私は寝る間も惜しんで知識を頭に叩きいれ、マナーを身体に染みこませるように練習する。
「元が庶民であることに引け目を感じる必要はありません」
そんな私を見かねてかキースさんが紅茶を差し出しながら言う。
引け目…。
私はアルさまに相応しくありたいと思う。
アルさまが私のせいで言われなくともいいことを言われなくてすむようになりたいと。
少しでも、認められるようになりたいと。
そのことで、私は庶民だったことに引け目を感じてしまっているんだろうか。