冷酷な王さまは愛し方を知らない
「…私の言葉ではなくても、キースさんの言葉で伝わると思いますよ」
「私は…、私はこれまでアルさまの考えを改めることができませんでした」
「そうでしょうか…。アルさまが言っていました。一番嬉しかった贈り物は、キースさんから何気なくもらった万年筆だと」
「え……」
私の言葉に、驚いたようにキースさんが目を見開いた。
そんなに驚くものだろうか。
あんな風に近くで見たのは初めてだったけれど、いつもアルさまの胸ポケットにあった万年筆。
それがキースさんからの贈り物だとは知らなかったけれど。
「確かに、万年筆を差し上げたことはありますが…、アルさまは今もそれを…?」
「大切に使われているようですよ。インクがなくなったらインクを替えて。とても大事に使われているのがわかりましたよ」
知らなかったの?
もしかしたらキースさんは、諦めていたのかもしれない。
そんな風に大事にされるなんて思ってもみなかったようだ。