冷酷な王さまは愛し方を知らない
level 5
悲しみの涙
慌ただしくその報せがきたのは、あの幸せな誕生日から数日も経っていない時だった。
「挙兵です!コールド王国が挙兵したとの知らせが!」
アルさまと、帰蝶とも言える二人の時間を切り裂く声。
それはあまりに突然終わりを告げた。
二人きりの、穏やかな優しい表情はすっと消え、きりっとした少し冷たいとも思える王さまのアルさま。
私は邪魔をしないよう黙って様子を伺う。
戦が始まる。
王妃としてここにきて初めての戦。
きっと、候補者として待っていたあの時と違う。
恐怖も、不安も、待つことの辛さも。
あの時以上だ。
「すまない、リズ。俺はいかなくては」
「…はい」
「キースをいつも通りここに置く。なにかあればキースの指示に沿って動け」
「はい」
行かないで。
喉元まで出た言葉。
そんな事言えない。
言ってはいけない。
アルさまは、この国を護るために戦うのだ。
アルさまが挙兵しなければ、挙兵したコールド王国に国を乗っ取られ、たくさんの国民が血を流すことになる。