冷酷な王さまは愛し方を知らない
「俺は、…俺は今まで、先陣を切って戦ってきた。いついかなる時も。自分が傷つくことを厭わず、剣を振るう事を躊躇った事もない」
「…はい」
今は、アルさまの言葉を漏らすことなく聞きたい。
アルさまを支えたい。
今こそ、その時だと思った。
「王となり、自分の命がどれほど大切なものかわかっていても、先陣を切って戦うことが俺の性。自分が死ぬことが許されないようになってから、むしろそれ以上に戦うことに躊躇いがなくなった」
「…」
「だが…、今回…、初めて思ったのだ。……死にたくない、と」
「え…」
「お前の泣いた顔がよぎった。お前の暖かな温もりを思い出した…。躊躇ってしまった…、その隙をつかれた。それをクリスが庇い…」
私の…せい…。
私が、きちんとアルさまをお見送りできなかったから。
きっとアルさまは否定なさるだろう。
けど、きっとそういう事。
「アルさまのせいではありません。アルさまが、気に病むことはなにもないではありませんか」
「そんな事は…」
「クリスさんだって、そんな事望んではいませんよ、きっと」