冷酷な王さまは愛し方を知らない


「バカ!目を覚ましなさい!クリス!ねえ!!」



クリスさんが治療を受け眠っている治療場とされたフロアに悲痛な声が響く。
それは、サーシャさんのものだ。

私がアルさまに頼んで連れてきてもらった。


治療の結果、クリスさんの怪我は思いの外酷く、手は尽くしたが意識が戻るかどうかの瀬戸際だと言われた。
もしこのまま…、最悪な結果を考えたくはないけれど、それでもサーシャさんに会わせたかった。

それに、サーシャさんの声で目を覚ましてくれればと淡い期待もあった。


クリスさんも、きっとサーシャさんの事大切に思っているはずだから。



「目を覚まして!いつものヘラヘラした顔で店に来て!クリスが来るの、ずっと、ずっと待ってるんだから!」




サーシャさんの悲痛な声が胸に苦しい。
サーシャさんの瞳からとめどなく溢れてくる涙がポタポタとクリスさんの手に落ちた。

包帯だらけのクリスさんの身体。
でも、クリスさんの身体には新しい傷だけではなく、古い傷もたくさんあった。

これまでの戦いの傷跡…。



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