冷酷な王さまは愛し方を知らない


あの傷を見て思った。
アルさまもきっと、同じだと。


これまで、幾度と戦ってきた証。



「…クリス…っ」



サーシャさんの気持ちは痛いほどわかる。
アルさまが同じ状態で戻って来たなら、私も同じくらい泣き崩れるだろう。

クリスさんのことだって、とてもよくしてもらっているから胸が痛い。
それが、私のせいだというなら尚更……。



私はそっとフロアを後にした。



もっと頑張らなきゃ。
強くならなきゃ。

どんなことにも動じないように。
アルさまをしっかりと送り出せるように。
私の存在が、アルさまの力の源になるくらい。



「アルさま…!」



廊下を歩いていると、その先にアルさまの姿を見かけた。
慌てて追いかけ声をかける。
振り返ったアルさまは、弱々しく今にも消えてしまいそうなほど。



「…お前を側に置かない方がいいのかもしれない」

「え…」

「お前がいる事で…、俺は弱くなってしまった……」




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