冷酷な王さまは愛し方を知らない
コハク
「ほんっと、心配かけて、バカ!!」
廊下まで響く声にそっと中を覗くと、サーシャさんがポカポカとクリスさんを叩いていた。
クリスさんは、なんと意識を取り戻しそれから目まぐるしい回復の最中。
身体を起こせるようになって、お医者様からもお墨付きが出たほど。
毎日のようにお見舞いに通うサーシャさんの愛の力だろうか。
「痛いよ、サーシャ。ごめんって何度も謝ってるじゃないか」
「もう今度から、ちゃんと私に一言言ってから行ってちょうだい!もうこんな思い懲り懲りだわ!」
「わかったよ…。サーシャの許可が必要なんだね」
そう言いながらクリスさんはとても嬉しそうだ。
きっと、本当はずっとこうしたかったのかもしれない。
嘘をつかずに本当の姿でこうやって…。
「目を覚ました時に、サーシャの顔を一番に見れるのは幸せな事だね」
「ありがたいと思いなさい」
「思ってるさ。…毎日君のところに帰りたいくらい」
「いつだって、待ってるのに…」
私は思わず廊下に出て扉を閉めた。
私の存在に気づいていなかったみたい。
とっても二人の世界だった!