冷酷な王さまは愛し方を知らない


ミリアさんがそんな風に思ってくれただけで十分。



「自分には、あの仕事しか向いてないって思ってた。でも、…今、すごく楽しくやれてる。サーシャさんはとてもいい人で、以前の主人とは大違いで…だから戸惑いもあるけど…」

「うん。サーシャさんは本当に素敵な人なの。私も、本当に救われたから」




ミリアさんは、とても輝いて見えた。
本当のミリアさんはこんなにも穏やかに笑う人だったんだ。
周りの環境がミリアさんを変えてた。

それが確認できてほっとした。
私は店を後にした。


本当は花を買いたかったけれど、すぐにお城に戻れないし枯らしてしまうのはかわいそうだから。


街並みを歩く。
21年何度も何度も歩いた道。

少し来ないだけでとても懐かしく思う。


ふと、視界の隅に映った人影に足を止めた。
立ち去ろうとする姿に思わず足が向かった。



「…コハクくん!」



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