冷酷な王さまは愛し方を知らない
どうして声をかけてしまったんだろう。
彼は私を殺そうとした人なのに。
「……誰」
「誰って…、覚えていないの?」
返ってきた返事は、思ってもみないものだった。
自分が殺そうとした相手の事、覚えていないの?
お金を払えばなんでもするって言っていた。
だから、あの事さえもただの任務の一つでしかないのだろうか。
「……ああ。失敗したやつ」
「失敗かどうかはわからないけど…、こんなところに普通にいるのね」
「ある程度人目についてないと、仕事来ない」
淡々と、でも正直に話す彼になんだか驚く。
声をかけてしまった私もどうかと思うけれど、声をかけられ私の事を思い出した上で逃げようとしない彼も相当変だ。
「そうなんだ…」
その時、ワーッと子どものはしゃぎ声が聞こえ視線を反らす。
子どもが楽しそうに追いかけっこを始めていた。