冷酷な王さまは愛し方を知らない
「うだうだ言ってんじゃねえ!」
男が拳を振り上げる。
私はビクッと身体を揺らし目を固く閉じた。
「―――なっ!?」
でも、想っていた衝撃は来なくて私は思わず目をあけた。
男の子節はギリギリのところで止まっていて、その腕を掴んでいる手。
その手の先を見ると、表情を変えない無のままのコハク。
どうして―――――。
「コハク、くん…?」
「貴様!」
男は乱暴にコハクくんから腕を外す。
掴まれた手首を反対の手で擦りながらコハク君を睨みつけた。
「貴様…、ようやく見つけたぜ!この前の借り、きっちり返させてもらうぜ!」
男は不敵に笑うとコハクくんに向かってくる。
コハクくんは私の肩をトンと押しどかすと、軽やかな身のこなしで男の攻撃をかわした。
以前の時も感じた、コハクくんの“無”。
感情がないみたいに表情がなく。
感動がないみたいに淡々としている。