冷酷な王さまは愛し方を知らない
「…なんだと思っていたの?」
「だからわからなかった。人のケガをそこまでうるさく言うのなんでか知りたかった」
いったいどんな生活をしてきたんだろう。
私が心配していたのがわからなかったなんて。
自分が怪我したわけでもないのに慌てふためいているのがどうしてかわからなかったってことでしょう。
「今まで任務の時に怪我したことなかったの?その時依頼人の人は何も言わなかった?」
「言わない。任務が大事。俺の命はどうでもいい」
サラリと、なんの疑問も持たないくらいにそれが当たり前で。
コハクくん自身もそれが普通になってしまっていたんだ。
そんなの、悲しすぎるのに。
「命、大事にしなくちゃだめだよ…」
「…」
それでも、コハクくんはやっぱりピンと来ていないようだった。
転んだら差し伸べられる手があって、心配してくれる温もりがいつだってあった私はとても幸せ者だったのかもしれない。
それが当たり前にない可能性なんて考えた事なかった。