冷酷な王さまは愛し方を知らない
キースさんが料理を下げ、一人になった部屋。
ここを出る準備をした方がいいのかもしれない。
私は、王妃にはふさわしくない。
アルさまの事は好きだけれど、それだけじゃダメなんだ。
「アルさま…」
好きという気持ちだけでは、側にはいられない。
「キキッ!」
あけていた窓の隙間から入ってきたのはクゥちゃん。
首についている手紙は、コハクくんからのものだろうか。
見張りの目を盗んで…。
『迷惑かけてごめん。俺の事はいいから、自分が無事でいられる方法をとって』
そう書かれた手紙。
なんの感情も感動もないなんて嘘。
こんな風に、人を思いやれる。
コハクくんにもちゃんと人の心はある。
きっと知らないだけ。
コハクくんを巻き込んだのは私。
私と関わらなければ、きっと捕まることなんてなかった。
そう思ってしまう私は、やっぱりアルさまの側にいることは相応しくないんだろう。