冷酷な王さまは愛し方を知らない
「ええ、花屋で働いていたのを、一目ぼれしたのです」
「そうか。アルヴィン殿が一目ぼれとは、相当ではないか」
「ええ。煌びやかに着飾ることばかりで、価値が地位や名誉だけだと思っているような者とは違い、謙虚でささやかな幸せも見つけられるような、とてもできた嫁です」
「それはそれは、こうして惚気られるとは」
初老のその方は声を高々に楽しそうに笑う。
アルさまのその声が聞こえたのか、先ほどの御令嬢の方々は散るようにはけて行った。
少しだけスッキリした気持ち。
アルさまにとても感謝だ。
でも、少しだけ悔しい。
自分でちゃんと示したかった。
「リズ、平気か?疲れたら言うように」
「はい…。ありがとうございます。アルさま」
「なにがだ?」
嬉しくてお礼を告げるけど、アルさまはなんの事だかわからないというように首をかしげる。
先ほどのあれは、意図したものではなかったんだと知り、余計に嬉しくなった。
アルさまの本心のようだから。