冷酷な王さまは愛し方を知らない
「いえ。そこまででは。ですから騎士団ではなくコハクを連れていくのですよ。念のため、という事です」
「それでも、気を付けてね」
「はい。ありがとうございます」
いまだに、戦地に送り出す時には不安が胸をいっぱいにする。
どうか無事に帰ってきてほしいと、帰ってくるその瞬間まで気が抜けないのだ。
それがアルさま以外でも同じこと。
キースさんも、コハクくんも、クリスさんも、他の騎士たちも…。
もう私にとっては立派な大切な人。
「アルさまは城におりますので。ご安心ください」
「…そっか、わかった」
アルさまが赴くまでもないことなのだろう。
少しだけホッとする。
キースさんたちが城をたったのほその数時間後の事だった。
キースさんを送り出したしばらく後、城内が慌ただしくなった。
何事かと部屋の外を覗く。
「…リズ」
顔を覗かせた反対側から名前を呼ばれ振り返る。
少し焦ったような、息を切らせたアルさま。