冷酷な王さまは愛し方を知らない
アルは慌ただしく廊下を走る。
真っ先に向かったのは愛する妻、リズの部屋だ。
「リズ…!」
息を切らし、肩を上下させながら中に入ると、いつも暖かな笑顔で迎えてくれるはずのリズがベッドに横たわり青白い顔で苦しげな呼吸を繰り返していた。
「なにが、あった…」
「そ、それが…。医師の話によると、毒物の類いのものだろうと…」
アルより先に戻っていたキースがアルに答える。
アルは拳を握り、憤りをどうにか抑えつけようとしていた。
なぜ、こんなことになった?
誰がこんなことを。
「誰の仕業だ」
「まだわかっておりません。調理場やそれに関わったものは別室に集め聞き取り調査をしているところです」
「リズは」
「致死量には至らない量だったようなので、処置もすませ命には別状はありません。ただ…」
キースが言いづらそうに言い淀む。
「どこかに障害が残る可能性があると」
「な、に…?」
「そういった作用のある毒のようです。毒の影響をどこかに受けてしまうだろうと。それが、どこに来るかはリズさまが起きるまでわからないようで」