冷酷な王さまは愛し方を知らない


「おれが…おれが、側にいなかったから…守れなかった」


こんな風に泣き噦る姿を初めて見た。
こんな感情を持っていたのかと。
しかし、コハクの言葉は、アルの抱くそれと同じだった。

守れなかった。
こんなにも愛しているのに。
守りたいといつも思っていたのに。


「お前のせいではない」

「…慰めなんかいらない。おれは、リズを守ると誓った。それなのに、守れなかった」

「それは、俺も同じだ」

「違う。お前は王だ。王は守られる側だ。俺は隠密として雇われた。守らないといけない」

「そういう意味ではない」

「じゃあ、」

「王としてだけではなく夫として、愛するものを守りたいと思うのは当然だ」


そうハッキリと告げられたことに驚いた。
こんな風に人を愛せるのだと。
なんの得もなく、利益のためでなく愛するというだけで守りたいと思う。
そんな気持ちをリズに出会って初めて知ったのだ。

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