冷酷な王さまは愛し方を知らない


「しばらくは、私がリズさまのお世話もさせていただきます」


クリスが訪ねてきてそう言った。
お世話って、クリスが?


「え?でも、クリスは騎士で…」

「はい。ですが、リズさまの護衛もかねて私がつかせていただきます」

「そうなんですか…。よろしくお願いします。あの、でも、どうして敬語…」


これまで、クリスさんは私がこういう立場になっても砕けた今まで通りの口調で話してくれていた。
変わらないクリスさんに、私は嬉しくなったりもしたのだけど。


「これまでは、直接的な関わりではなかったので。こうして王妃さま付きとして選ばれたからには、これまで通りの接し方はできません」

「そうですか…」


なんだか、寂しい。
仕方のないことなのかもしれないけれど。

クリスさんとは、花屋で働いていてクリスさんを騎士だとは知らなかった時から知っていて親しくさせてもらっていたから。
王妃になって変わっていくものに慣れない中で、クリスさんとは変わらずにいられるんだってなんとなく思っていた。


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