冷酷な王さまは愛し方を知らない
ああ。もしかしなくとも、また戦が始まるのかもしれない。
口には出さないけれど、内心でそう思った。
穏やかだった日々には終わりを告げ、私はまた待つもどかしさを感じなくてはいけない。
ほんの数か月の穏やかな日々は本当にあっという間。
哀しいけれど、これが現実なのだ。
数か月、穏やかな時間があっただけでも幸せなのかもしれない。
「それが、今回はコールド王国の王自ら先陣を切るという噂で」
「なに?あれは、いつも戦場には出てこず駒を動かすだけの男だっただろう」
「ええ。ですから、本格的に勝負をつけるつもりなのかと」
「…ここでする話ではなかった。執務室へ行こう」
「あ、申し訳ありません。では」
おそらく、私に聞かせまいとした配慮だろう。
でも、多少なりとも聞いてしまっては、不安はぬぐえない。
これまでとはどこか違う戦になるのかもしれない。
そんな不安がぬぐえなかった。