冷酷な王さまは愛し方を知らない
「崖…。崖から落ちてしまわれたんでしょうか」
「わからない…。アルさまが乗っていた馬も共に消えていた。崖下は覗き見たが、わからなかった」
いったい、どこに行ってしまわれたのか。
突如撤退した敵軍。
それはどうしてだろう。
わからない。
でも、現にアルさまはここに戻ってきてくださらなかった。
最悪のシナリオがよぎる。
「リズ。しっかりしろ。アルさまは必ず見つけ出す。きっと、生きているさ」
クリスさんが、励ますようにそう言った。
クリスさんだって不安なはずだ。
心配なはず。
私より長い間アルさまを支え護ってきた人なのだから。
キースさんだって。
アルさまへの忠誠心はとてもよく知っている。