冷酷な王さまは愛し方を知らない
皆はどうしているだろう。
私がここに来ることで、撤退してもらうように交渉した。
とりあえずは、コールド王国の傘下に入ることは免れたが、それもいつまでもつかわからない。
そうまでして、どうしてゼルダ王は私を手に入れたかったのだろう。
国を手に入れるよりも優先する理由って…。
分からないから余計に怖ろしいのだ。
それにここに来てから一度もゼルダ王の顔を見ていない。
そもそも会いたくもないから構わないのだけど。
「リズさま、失礼いたします」
扉の向こうからノックの音とともに入ってきたのは私につけられたメイドの女の人。
きっちりとまとめられた髪と、ピシッと伸びた背筋。
真面目そうな雰囲気を放つ、その人の名はマリアンというらしい。
「お食事をお持ちしました」
「欲しくないの」
「そう言われてずっとほとんど口になさらないじゃないですか」
こんな敵国で出される食事を嬉々として食べられるわけがない。
このマリアンはとても親切に世話を焼いてくれるけれど、ソレを素直に受け取る気にはなれないのだ。
私が気になるのは、イリア王国の事。
皆が今、どうしているか。
コハクにも、なにも言わずに来てしまった。
私に怒ってるかもしれない。
キースさんやクリスさんは、無事だろうか。
どうにか国を建てなおす方法を考えてくれたらいいのだけど。
でも、きっと二人なら大丈夫よね。