冷酷な王さまは愛し方を知らない

「リズさま。ひとつだけ、進言させてください」

「・・・っ、なに?」

「ゼルダさまには、決して悟られないようになさってください」


おめでとうございます。といってくれた優しい表情とは代わり、ピリッとした固くひきつった表情でそう言われた。
涙が引き、気が引き締まる。


「イリア王国の王との子供を身籠っていると知れば、怒りを買うでしょう。その大切な命を、奪われるかもしれません」


ゾクリと背筋が凍る。
思わずお腹を庇うように包み込んだ。
ここに新しい命が宿っていると聞かされた途端、自分のお腹の中がとても愛しいものに代わり、慈しみが生まれそして同時に守らなくてはと強い意思が生まれる。

「どうして、そんなことを教えてくれるの」

「どのような命でも、生まれてくる命に罪はありません。簡単に奪われていい命はありませんから」

「ありがとう。必ず言いつけを守るわ。この子も、守りきってみせる」


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