冷酷な王さまは愛し方を知らない
「リズさま!」
「マリアン、いったい・・・」
ゼルダ王が出ていったあと、バタバタと慌ただしくマリアンが入ってきた。手にはなにか服のようなものを抱えて。
「リズさまを迎えにこられたのだと思います。今しかありません。早くここから逃げてください!」
「マリアン・・・」
「使用人の服です。これで使用人に紛れていけば多少の目眩ましにはなるかと」
そんなことまで。
本当に、マリアンはとても優しい人だわ。
他国の人質である私にここまでよくしてくれるなんて。
なんとお礼を言っていいか。
彼女たちも、守りたい。
横暴であるあのゼルダ王の暴挙から。
守りたい。
「急いでください、リズさま」
「ありがとう。本当に。恩に着ます」
「いいえ。いいえ。どうか、ご無事で。どうか幸せに」
こんな暖かな人がいる国。
きっと、良くなっていくはずなのに。
「マリアンも、どうか幸せに」
「そんなことを言ってくださった主は、はじめてです」
マリアンはそう言って泣き笑いを浮かべた。