冷酷な王さまは愛し方を知らない
マリアンが用意してくれた使用人の服に着替える。
ふとお腹に優しく触れた。
「絶対に、守るからね」
誓いを胸に一度深呼吸をして。
そっと扉に手をかけた。
廊下には人の姿はなかった。
きっと、アルさまを名乗る者の登場に対応に終われているのだろう。
アルさまを名乗る人物。
それは本当にアルさまなのだろうか。
もしそうなのだとしたら、会いたい。
早くこの目で確かめたい。
でも今は、この身とお腹の中の赤ちゃんを守ることだけを考えなくては。
それが今私が精一杯しなくてはいけないことだわ。
そう思って気をしっかりと持つと、人に遭遇しないように気を付けながら進む。
でも、皆バタバタと慌ただしくしているため堂々と使用人のふりをしていればあまり気にされないということもわかった。
だから、不審に思われないように誰かに遭遇すると堂々と背筋を伸ばす。
そうしてなんとか城の一階までは辿り着いた。