冷酷な王さまは愛し方を知らない
正面から外に出ることはさすがに難しいだろう。
この城のことはよくわからない。
イリア王国の城には使用人の使う裏口がある。
ここにもあるだろうか。
人目を忍びながら裏口を探そうと正面玄関を背に歩き出した。
裏口のありそうな人気のない場所へと向かっていると、突然腕を引かれそばの部屋に引き込まれる。
声をあげようとした口は手で押さえ込まれくぐもった声が出た。
「しっ、静かに。リズ」
「んっ!?」
その声にはっとする。
淡々とした、抑揚のない声。
懐かしさに涙すら浮かんだ。
「こ、コハクくん・・・」
私が気づいたことに気づいたのか手がそっと放された。
振り向くと、確かにそこにはコハクくんの姿が。
「リズのバカ。勝手に決めて、俺をおいていくなんて」
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・。よかった。コハクくんも無事だったのね」
「無事。キースもクリスも、みんな元気。みんな悲しんでる。怒ってる。勝手にリズが決めてしまったこと」
「・・・そうね。勝手に決めてしまったから」