冷酷な王さまは愛し方を知らない
「あの、王さまもよくここに来られるのですか?」
なんだか場が持たず、なんの話をすればいいのだろうと迷って出た問いはそんな陳腐な質問。
「通りかかる程度だ」
「そうですか…」
「お前は何をしていた」
「え、あ、私は…。少し外の空気が吸いたくて、綺麗な花に囲まれていると心が安らぎますから」
その先でこんな風に王さまに出会うことになるとは思わなかったけれど。
これは、抜け駆けということになるのだろうか。
私たち候補者と王さまとの時間は決められていたはず。
あれ、もしかして…、今この時間がそうなのかしら。
でも、その時には必ず監視の人がつくと。
どこかわからないところで見張っているのかもしれない。
「…呼び方」
「え?」
「前のままでいい」
「前の…?」
ふいに言われた言葉の意味が解らず首をかしげる。
「言っただろう。アルでいいと」