冷酷な王さまは愛し方を知らない
「辞退することは許さない。…なにが不満だ。何か足りないものでもあるのか?不自由な事でも」
「いえ!そんな、不満なことなど!不自由もしていません!」
「ならばなぜ。断る理由などないではないか」
断る理由…?
なぜないと言い切れるのだろう。
王妃という立場は、誰しもが憧れるものかもしれない。
でもそれは、憧れであって。
確かに、シイナ様やあの方々はそのために闘志を燃やされている。
でも私は…。
憧れていた。
想い想われて一生を共にする。
父と母がそうだったように。
父と母は、お互いを想い合って生きてきた。
母が病に倒れた今も、父は母のために懸命に働いている。
母も、そんな父のため辛い治療にも耐えいつだって笑顔を絶やさずに。
「結婚というものは、想い合う者同士がするものです。こんな風に、競い合うようなものでは…」
「王族を愚弄するのか?」
「違います!ですが、私は王族ではありません。庶民で、…ですから」