冷酷な王さまは愛し方を知らない
「金が要るのだろう?」
「え…」
「王妃になれば、自由に動かせる金が手に入る。貴様の母の治療費なんて簡単に作れるのだぞ」
「…っ!」
王さまの言葉に、目を見開いた。
「馬鹿にしないで!お金のためになら、なんでもするとお思いですか!?」
そんな風に思われたなんて悔しくて、思わず怒鳴っていた。
そうやって言えば私が納得してここに大人しくいると…。
私はこのどうしようもない憤りをこれ以上ぶつけるわけにはいかない、そう思いその場から駆け出していた。
王さまに対してあんな愚行…。
どんな処罰があるか。
それでも、許せなかった。
あんなこと。
私を、なんだと思っているの。
冷酷な王さま。
彼がそう呼ばれていたことを、すっかりと忘れていた。
花屋で出会ったあのアルさんは、ぶっきら棒ではあったけど、不器用なだけで温かみはある人だと思っていたのに。